俳句用語集

種類 読み 意味
挙句・揚句 あげく 連歌・連句の最後の七・七の句。⇒発句(ホツク)。転じて、おわり。結局。
一句 いっく 言葉のひときり。一言。転じて、一段。ひとくさり。俳句一つ。詩で、五言または七言のひときり。和歌で、五文字または七文字のひときり。
表八句・面八句 おもてはっく 連歌・俳諧で、百韻の時、懐紙の第一紙(初折シヨオリ)の表に記す八句。
折句 おりく 短歌・俳句などの各句の上に物名などを一字ずつ置いたもの。「かきつばた」を「から衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬるたびをしぞおもふ」(伊勢物語)、「ゆたか」を「夕立や田をみめぐりの神ならば」(其角)とする類。
佳句 かく よい句。美しく言いあらわした文句。
重ね句 かさねく 和歌で、一音以上の同じ音を重ねて語調を整えた句。また、その作歌法。「いかほのぬまのいかにして」の類。
活句 かっく 活(イ)きた言葉。禅で、悟りの境地のはたらきを如実に表す言葉。俳諧で、言外に余情のある句。#死句
隔句 かっく 隔句対の略。漢詩文で、第一句と第三句とのように、句を隔てて対句をなすこと。
上の句 かみのく 短歌の初めの五・七・五の三句。また、連歌・俳諧で五・七・五の句。⇒下の句
冠句 かんく かむりく。かむりづけ。
漢和聯句 かんわれんく 聯句の一体。五・七・五の一七音または七・七の一四音の和句と、五言の漢句とをまじえる形式のもののうち、発句が漢句で始まるもの。鎌倉時代以来行われた。漢和。⇒和漢聯句
慣用句 かにんようく 二語以上が結合し、その全体が特別の意味を表す句。「油を売る」「間髪を入れず」の類。イディオム。
聞句 ききく 意味がなかなかわかりにくい俳句。去来抄「むかし―といふものあり」
奇句 きく 人の言い及ばない句。めずらしい句。
御句 ぎょく 他人の作った句の尊敬語。
金句 きんく 美しい句。古人の残した、模範となる言葉。金言。格言。平家四「金章―おなじく一代教文より出たり」
禁句 きんく 和歌・俳句などで忌み避けるべききまりの語句。とめ句。
吟句 ぎんく 詩歌の句を吟ずること。また、その句。
警句 けいく 人生・社会・文化などについて真理を簡潔な中に鋭く表現した語句。「水清ければ魚棲まず」の類。アフォリズム。
結句 けっく 漢詩で、起承転結の「結」の句。一般に、詩歌の結びの句。
言句 げんく 言と句。ことば。もんく。
原句 げんく もとの句。
古句 こく 昔の句。古人の句。
後句 ごく 後の句。
五言絶句 ごごんぜっく 漢詩形の一。五言四句から成る近体詩。六朝の民歌に起り、唐代に至って形が定まった。五絶。
腰の句 こしのく 和歌の第三句。
言句 ごんく みじかい言葉。一言半句。
指し句 さしく 俳諧の席上で、月や花の句などの場合、一座の様子によって宗匠が座中の一人を指名して付句をさせること。
戯句 ざれく ふざけて作った発句。狂句。
死句 しく 禅語で、凡俗に過ぎて禅味の少ない句。転じて、詩・俳諧で言外に余情のない句。活句
地句 じく 俳諧で、平凡で地味な句。
下の句 しものく 和歌の第四句と第五句。また、連歌・俳諧で七七の句。⇒上の句
惹句 じゃっく (キャッチ‐フレーズの訳語) 宣伝・広告などで人を引きつける文句。
秀句 しゅうく 秀逸な句。また、すぐれた俳句。
承句 しょうく 漢詩絶句の第二句。第一句すなわち起句の意を承けて敷衍する。
冗句 じょうく むだな句。不必要な句。(joke の当て字として使われたもの) ふざけた文句。冗談の文句。
定句 じょうく (連歌で) 紋切り型のつまらない句。
畳句 じょうく 同一の句をかさねて用いたもの。
初句 しょく (漢詩・和歌などの)はじめの句。起句。
甚句 じんく (「地(ジ)の句」の意。また、越後国の甚九という人の始めたものともいう) 代表的民謡。七・七・七・五の四句から成る盆踊り歌。米山(ヨネヤマ)甚句・相撲甚句・名古屋甚句・越後甚句・博多甚句などが名高い。
新興俳句 しんこうはいく 一九三一年(昭和六)、水原秋桜子・山口誓子の「ホトトギス」からの分離を契機として起った俳句運動。「天の川」「旗艦」「土上」などの結社もこれに属する。発想・感覚の近代性を強調。
末番句 すえばんく 淫猥なことをよんだ川柳。末番の句。ばれ句。
相撲甚句 すもうじんく 俗謡の一。江戸末期から明治を通じて二上り甚句が流行。現行のものは本調子甚句で、「ドスコイ、ドスコイ」の囃子詞(ハヤシコトバ)が入る。力士が土俵で余興に唄って流行。
成句 せいく 古人の作った詩文の句で、よく知られているもの。「人間到る所青山あり」の類。習慣的に固定している句。秋の形容の「天高く馬肥ゆる候」の類。
省句 せいく 文章中の句をはぶくこと。また、そのはぶいた句。
贅句 ぜいく むだな文句。
是句 ぜく 良い格言・成句。
隻句 せっく 一つの文句。ほんの短いことば。
節句・節供 せっく 節日、すなわち人日(一月七日)・上巳(三月三日)・端午(五月五日)・七夕(七月七日)・重陽(九月九日)などの式日。その日に供される供御(クゴ)を節供(セチク)といった。
絶句 ぜっく 漢詩形の一。四句から成り、起・承・転・結の構成をとる。一句が五言のものと七言のものとがある。六朝の民歌に源を発し、唐初に確立、盛唐に至って盛行。その平仄(ヒヨウソク)法は律詩の半截に準拠。話の途中で言葉に詰まること。演劇の台詞(セリフ)や演説・誦読などで、中途でつかえて言句の出ないこと。「激しい野次に―する」
千句 せんく 連歌または俳諧で、百韻を一○巻重ねたもの、すなわち句数一○○○のもの。千句全般を通して指合(サシアイ)・去嫌(サリキライ)がある。
選句 せんく 多くの中から、よい句を選び出すこと。また、その句。
千載佳句 せんざいかく 漢詩。二巻。大江維時編。天暦(947〜957)頃成立。唐の詩人一五三人の七言詩一○八三首から二句ずつ抜き出し、部門ごとに分類したもの。「和漢朗詠集」成立の先駆けとなった。
挿句 そうく 文中に句をさしはさむこと。また、その句。
造句 ぞうく 新しく語句を造ること。また、その語句。
添発句 そえほっく ある発句に和して詠み添える発句。狂、連歌盗人「これに―をせまいか」
俗句 ぞっく 卑俗な句。ありきたりの句。
駄句 だっく つまらない俳句。拙劣な句。
只句 ただく 連歌で、発句以外の普通の句をいう。筑波問答「この頃は―も発句のやうに心をわり、一かどあるやうにし侍れども」
脱句 だっく 脱け落ちた句。
立句 たてく 連歌・俳諧で、古今の名家の句を発句に立てること。また、その句。
短句 たんく みじかい句。字数の少ない句。日葡「タンクチャウリ(長理)ヲフクム」特に連歌・連句などで、短歌の下句に相当する一四音の句。⇒長句
長句 ちょうく 字数の多い句。特に、漢詩で五言の句に対して七言の句をいう。連歌・連句などで、短歌の上句に相当する一七音の句。⇒短句
長短句 ちょうたんく 長い句と短い句。長句と短句とを混用した詩。長短詩。
珍句 ちんく めずらしい句。まれに見る句。奇異な句。珍妙な句。
対句 ついく 修辞法の一。語の並べ方を同じくし、意味は対(ツイ)になる二つ以上の句を連ねて表現すること。また、それらの句。「魚は水に飽かず。魚にあらざれば、その心を知らず。鳥は林をねがふ。鳥にあらざれば、その心を知らず」の類。儷句(レイク)。
付かぬ句 つかぬく (連歌などで、前句に付かない句の意から) 前の話と関係のない言葉。不適当、不釣合なこと。日葡「ツカヌクナコトヲイ(言)ウ」
継句 つぎく 雑俳の一種。八〜九字の題に、下をつけて、一七字の句とするもの。また、題を下に踏まえて一七字の句とする。
月並俳句 つきなみはいく 正岡子規が自分の革新した新派俳句に対して旧派(月並派)の俳句をののしって呼んだ称。転じて、陳腐で新しみのない俳句。
付合 つけあい 連歌・俳諧で、前句に付ける付句(ツケク)を作ること。また、その前句・付句の一組。前句が長句(五・七・五)ならば付句は短句(七・七)で、前句が短句ならば付句は長句で付ける。
出来発句 できぼっく 即興の発句。狂、連歌盗人「これは亭主が家固めの時の―かと思ふ」
転句 てんく 漢詩の絶句の第三句。この句で意を転ずる。
倒句 とうく 意味を強めるために、普通の語法の位置を逆にして置いた句。「帰りなん、いざ」の類。
頭句 とうく 短歌の第一句。発句。
通り句 とおりく 広く一般に通じ用いられる文句。諺のように用いられる文句。
止句 とめく 和歌・俳句で忌み避ける句。禁句。
頓句 とんく すばやく句を作ること。去来抄「詞道具より入る人は―多句なり」
難句 なんく むずかしい句。わかりにくい文句。連歌・連句で、付けにくい句。
逃句・遁句 にげく 逃げ口上。俳諧で、むずかしい前句や手をこめた句が連続した場合、さらりと曲節のない叙景句などをつけて次句のつきやすいようにすること。
二の句 にのく 朗詠の第二番目の句。次に言いだすことば。次のことば。
抜け句 ぬけく 言い逃れに言う文句。
延句 のべく 物事を延ばし、遅らせるための言い訳。
俳句 はいく 俳諧(ハイカイ)の句。こっけいな句。五・七・五の一七音を定型とする短い詩。連歌の発句(ホツク)の形式を継承したもので、季題や切字(キレジ)をよみ込むのをならいとする。明治中期、正岡子規の俳諧革新運動以後に広まった呼称であるが、江戸時代以前の俳諧の発句を含めて呼ぶこともある。短歌と共にわが国短詩型文学の二潮流。定型・季題を否定する主張もある。
化句 ばけく 冠付(カムリヅケ)で、言おうとする言葉をことさら分りにくい語で言いかえた句。
発句 はっく 律詩の第一・二の句。起句。⇒ほっく
陥句・入句 はめく 雑俳で、他人の句を盗みとって前句題などにあてはめること。
孕句 はらみく 詩文や連歌・俳諧で、あらかじめ考えておいた句。宿構の句。
ばれ句 ばれく みだらな内容をもつ川柳。
半句 はんく 一句の半分。ちょっとしたことば。
半臂の句 はんぴのく (歌学用語) 第三句に枕詞や休め詞を置いた句。
引句 ひきく 成句や俳句を引用すること。また、その成句や俳句。
尾句 びく 漢詩の最後の句。短歌の第三句以下。また、第五句。
美辞麗句 びじれいく 美しく飾った文句。
氷室の節句 ひむろのせっく 江戸時代、六月一日に、旧臘の雪水で製した折餅(ヘギモチ)または氷餅などを祝って食した行事。
姫瓜の節句 ひめうりのせっく 伊勢の桑名で、八月朔日(ツイタチ)に「姫瓜の雛(ヒナ)」を棚に据え、供物を供えて祭った行事。
平句 ひらく 連歌・俳諧で、発句・脇・第三・挙句(アゲク)以外のすべての句。
筆句 ふでく 執筆(シユヒツ)の句。また、それの置かれる連句の表八句目の句。
法句 ほうく 仏教経文の文句。
発句 ほっく 連歌・俳諧で、第一句の称。五・七・五の一七音から成る。また、それが独立して一つの詩として作られたもの。俳句。ほく。⇒挙句(アゲク)。
前句 まえく 付合(ツケアイ)で、付句の前に位する句。
妙句 みょうく すぐれた句。
名句 めいく 有名な文句。すぐれたよい文句。有名な俳句。すぐれた俳句。
文句 もんく 文章中の語句。文言。
病み挙句 やみあげく 病後であること。また、その時期。やみあがり。
遣句 やりく 連歌・俳諧で、前句がむつかしくて付句を付けにくい場合に、次の句を付けやすいよう軽く付けること。また、その句。俳諧では「逃句」とも。
落句 らっく 漢詩の結句。絶句では結句、律詩では最後の二句。転じて、終りの句。おち。
類句 るいく 類似の句。和歌・俳句の第一句もしくは第二句以下をも含めて、いろは順または五十音順に排列して和歌・俳句の検索に便にしたもの。
麗句 れいく 美しく飾った文句。
連句 れんく 「俳諧(ハイカイ)の連歌」の別称。発句(ホツク)が一句独立に作られるようになったので、これと区別し、また連歌とも区別して、俳諧の付合(ツケアイ)や歌仙・百韻・千句などをこう呼ぶ。
聯句 れんく 幾人かの人が一句ずつ作ったものを集めて一編の詩とすること。また、その漢詩。聯詩。
和漢聯句 わかんれんく 聯句の一体。五・七・五の一七音または七・七の一四音の和句と五言の漢句とを連句のようにつらねるもの。狭義には、そのうち発句が和句で始まるもの。五山文学とともに盛行。和漢連歌。
脇句 わきく 連歌・俳諧の付合(ツケアイ)で発句の次に付ける七・七の句。脇。
句上 くあげ 句数に同じ
句合 くあわせ 俳諧の発句を左右の両組から一句ずつ出して、判者がその優劣を決める催し。また、衆議判(シユギハン)の場合もある。
句意 くい 句の意味。
句会 くかい 俳句を作り、発表して批評し合う集会。
句数 くかず 句のかず。(連歌・俳諧で)懐紙の巻末に作者名とともに記す詠句数。句上(クアゲ)。四季・神祇・釈教・恋・旅・人倫・植物など、同じ範疇の句をつづけてよい限度数。
句柄 くがら 連歌・俳諧などの句の品格。
句眼 くがん 詩句中の眼目となるところ。
句義 くぎ 句の意義。
句境 くきょう 俳句に表現された境地。また、俳句をよむ心境。
句句 くく 一句一句。毎句。
句配り くくばり 和歌などで、句の並べ方。句の配置。
句稿 くこう 俳句の原稿。
句作 くさく 俳句を作ること。
句締 くじめ 俳諧で、点取りの巻末に点者が評語を記し自ら署名すること。
句者 くしゃ 俳句に巧みな人。
句集 くしゅう 俳句・連句を集めた書。
句相撲 くずもう 句合せの俗称。特に句会などで一定の題で一定の時間内に競作し、優劣を争うこと。
句題 くだい 詩歌で、古い漢詩の一句または三代集などの和歌の一句を題とするもの。俳句の題。
句中対 くちゅうつい 漢詩で、一句中に対句のあるもの。
句繕い くづくろい
句早 くばや 句のつけ方が早いこと。
句早い くばやい 句のつけ方が早い。句を考え出すことが早い。
句碑 くひ 俳句を彫りつけた石碑
句法 くほう 詩文・俳句などの組み立て方、作り方。
句論 くろん 文法学上、句・文についての理論。
馬酔木 あしび 一九○三年(明治三六)伊藤左千夫ら発刊の短歌雑誌。○八年廃刊。一九二八年(昭和三)「破魔弓」を改題した、水原秋桜子(シユウオウシ)主宰の俳句雑誌。
入花・入端 いりばな 俳句・狂歌などで、点者が受ける報酬。また、それを刷物にする場合の費用。にゅうか。
韻文 いんぶん 一定の韻字を句末に用いて声調をととのえた文。歌・詩・賦の類。詩の形式を有する文。
運座 うんざ 出席者が俳句を作り、秀句を互選する会合。一定の題により作ることもある。文政年間に始まり、明治時代日本派俳人が再興。膝回(ヒザマワシ)。
詠草 えいそう 和歌・俳句などの草稿。
花鳥諷詠 かちょうふうえい 一九二七年(昭和二)、高浜虚子が主唱した俳句作法上の理念。自然とそれにまつわる人事(花鳥)をただ無心に客観的にうたうのが俳句の本道であると説いた。
川端茅舎 かわばたぼうしゃ 俳人。名は信一。東京生れ。「ホトトギス」同人。兄竜子の影響で画業に志し、岸田劉生に学んだが、のち病を得て俳句に専念。句集「華厳」「白痴」など。(1897〜1941)
河東碧梧桐 かわひがしへきごとう 俳人。名は秉五郎(ヘイゴロウ)。松山市生れ。正岡子規の俳句革新運動を助け、その没後高浜虚子と俳壇の双璧。新傾向の句風を宣揚。句誌「海紅」「碧」「三昧」を創刊。(1873〜1937)
季語 きご 連歌・連句・俳句で、句の季節を示すためによみこむように特に定められた語。例えば、鶯は春の季語、金魚は夏の季語。季の詞(コトバ)。季題。
季題 きだい 季語に同じ。俳句を作る詠題としての季語。
季付 きつけ 俳句で季をつけること。
禁句 きんく 和歌・俳句などで忌み避けるべききまりの語句。とめ句。他人の感情をそこねるので、使うのを避けるべき語句。
沓穿かず くつはかず 俳句で、下五文字が句の構成上意味をなしていないこと。
首切れ くびきれ 俳句で、上五文字が句の構成上意味をなしていないこと。首切れ歌の略。
交題 こうだい 季題をとりまぜてよむ俳句。混題。
混点 こんてん 俳句点式の一。句のわきに引く単縦線。
雑詠 ざつえい 詩歌や俳句で、特に題を決めずによむこと。また、その作品。
三昧派 さんまいは 俳句の流派。「碧」の後身で、一九二五年(大正一四)創刊の俳誌「三昧」によった新傾向の一派。句風は七・七・七調や自由律、振仮名付にも至った。河東(カワヒガシ)碧梧桐を盟主とする。
字余り じあまり 定型の和歌・俳句などで、五音にすべき所が六音以上に、七音にすべき所が八音以上になるなど、一定の字数より多いこと。「枯枝に烏のとまりけり秋の暮」(芭蕉)の第二句などが例。
詩筵 しえん 詩歌・俳句などの会合の席。文人会合の席。
姿情 しじょう すがたと心ばえ。俳句の外形(言語・風調)と内容(思想・感情)。
実作 じっさく 主として短歌・俳句などの芸術作品を実地に作ること。また、その作品。
写生 しゃせい 事物の実相をうつしとること。客観的描写を主とする態度。絵画から出て短歌・俳句・文章についてもいう。
写生説 しゃせいせつ 正岡子規の説いた短歌および俳句における方法論。洋画の理論に学んだもので、対象をありのままに写しとることを主張。子規の没後、短歌では伊藤左千夫・長塚節・島木赤彦・斎藤茂吉ら、俳句では河東碧梧桐・高浜虚子らによって、それぞれ理論的な追求が行われ、また、散文への適応として、写生文の試みもあった。
しゅ 朱で歌や俳句に点をつけること。また、朱で詩文を訂正すること。
自由律 じゆうりつ 短歌または俳句の一様式。在来の三一字または一七字の形式を破ったもの。和歌では前田夕暮、俳句では河東碧梧桐・荻原井泉水らが提唱。
新傾向俳句 しんけいこうはいく 大須賀乙字の提唱に端を発し、河東碧梧桐を先頭として起った俳句の流派。俳句の定型とされる五・七・五の形式を破り、季題趣味の脱却を企図した。のち荻原井泉水の「層雲」と中塚一碧楼の「海紅」とに分派。
新興俳句 しんこうはいく 一九三一年(昭和六)、水原秋桜子・山口誓子の「ホトトギス」からの分離を契機として起った俳句運動。「天の川」「旗艦」「土上」などの結社もこれに属する。発想・感覚の近代性を強調。
新花つみ しんはなつみ 与謝蕪村の俳句・俳文集。一冊。一七七七年(安永六)成り、九七年(寛政九)刊。
席題 せきだい (俳句や和歌の会で) その席上で出される題。
層雲 そううん 荻原井泉水主宰の新傾向俳句の雑誌。一九一一年(明治四四)創刊。
宗匠 そうしょう 和歌・連歌・俳句・茶道などの師匠。
駄句る だくる (「駄句」を活用させた語) 駄句を作る。つまらない俳句を作る。
月並会 つきなみかい 毎月きまった集会。月例の和歌や俳句の会。
月並俳句 つきなみはいく 正岡子規が自分の革新した新派俳句に対して旧派(月並派)の俳句をののしって呼んだ称。転じて、陳腐で新しみのない俳句。
月見の宴 つきみのえん 月見のさかもり。月に団子・芋・女郎花(オミナエシ)などを供え、詩歌・俳句を作り、酒宴を催す。
定型詩 ていけいし 伝統的に詩句の数とその配列の順序とが一定している詩型の称。漢詩の五言・七言の絶句や、和歌・俳句などをいう。⇒自由詩・不定型詩。
当座 とうざ その席上で出す和歌・俳句の題。また、そのようにして即興で詠む和歌・俳句。
内藤鳴雪 ないとうめいせつ 俳人。名は素行(ナリユキ)。松山の人。正岡子規に俳句を学んで日本派の重鎮。著「鳴雪俳句集」「俳句作法」「鳴雪俳話」など。(1847〜1926)
中村汀女 なかむらていじょ 俳人。本名、破魔子。熊本市生れ。現代女流俳人の草分け。日常吟で知られ、俳句の普及に貢献。句集「汀女句集」「花影」など。(1900〜1989)
日本派 にほんは 明治俳壇の一派。一八九一年(明治二四)頃から正岡子規が新聞「日本」に拠り、「日本俳句」の名で純客観的な写生主義を主唱。内藤鳴雪・高浜虚子・河東碧梧桐・夏目漱石らが属した。根岸派。子規派。ホトトギス派。
入花 にゅうか (「花」は進物の意。進物には花の枝を折り添えたからいう) 俳句・狂歌などの添削(テンサク)料または点料。入花料。いればな。
俳家 はいか 俳句をよくする人。俳人。俳諧師。
俳画 はいが 日本画の一。俳味のある洒脱な略筆の淡彩または墨画で、俳句・俳文の賛のあるものが多い。
俳諧・誹諧 はいかい 俳諧歌の略。「俳諧の連歌」の略。俳句(発句)・連句の総称。広義には俳文・俳論を含めた俳文学全般を指す。
俳諧大要 はいかいたいよう 俳諧作法書。一冊。正岡子規著。一八九九年(明治三二)刊。俳句に対する一般的理論と俳句修学の過程と作法を説き連句に及ぶ。
俳句大観 はいくたいかん 俳句の索引。一冊。佐々醒雪編。一九一六年(大正五)刊。近世の著名な俳句の初句・第二句・第三句を五十音順に排列、句の下に全句と作者と出典とを記す。
俳人 はいじん 趣味として、また、職業として俳句をつくる人。俳諧師。俳家。
俳壇 はいだん 俳人の仲間。俳句を作る人々の社会。
俳風・誹風 はいふう 俳諧の風体。俳諧の流儀。俳句の作風。
俳名 はいみょう 俳句の作者としての名。俳号。はいめい。
俳友 はいゆう 俳句を作る上での友達。俳句仲間。
俳論 はいろん 俳諧または俳句に関する論議や論評。
俳話 はいわ 俳諧・俳句に関するはなし。
ほととぎす ほととぎす 「ホトトギス」) 俳句雑誌。一八九七年(明治三○)正岡子規主宰・柳原極堂編集の下に松山市で発行。翌年東京に移し高浜虚子が編集。俳句の興隆を図り、写生文・小説などの発達にも貢献した。現在も続刊。
正岡子規 まさおかしき 俳人・歌人。名は常規(ツネノリ)。別号は獺祭(ダツサイ)書屋主人・竹の里人。松山市の人。日本新聞社に入り、俳諧を研究。雑誌「ホトトギス」に拠って写生俳句・写生文を首唱、また「歌よみに与ふる書」を発表して短歌革新を試み、新体詩・小説にも筆を染めた。その俳句を日本派、和歌を根岸派という。(1867〜1902)
無季 むき 季節に属さないこと。俳句(発句)で季語を含まないこと。
名吟 めいぎん すぐれた詩歌や俳句。たくみな吟詠。
与謝蕪村 よさのぶそん 江戸中期の俳人・画家。摂津の人。本姓は谷口、後に改姓。別号、宰鳥・夜半亭・謝寅など。幼時から絵画に長じ、文人画で大成するかたわら、早野巴人(ハジン)に俳諧を学び、正風(シヨウフウ)の中興を唱え、感性的・浪漫的俳風を生み出し、芭蕉と並称される。著「新花つみ」「たまも集」など。俳文・俳句は後に「蕪村句集」「蕪村翁文集」に収められた。(1716〜1783)
類題 るいだい 和歌・俳句などを類似した題によって集めたもの。同種類または類似の問題。
連作 れんさく 和歌・俳句において、一人が同じ主題で数首または数句をつらね、全体として特別な味わいを出そうとする作り方。また、その作品。